2007年12月09日

占領の前からここに住んでいるし、これからも住んでいく

(承前)そのような過酷な状況のもとにあっても、渓谷の人びとはこれに向き合って頑張っているという。今年からは、ベドウィンたちの家の破壊を止めさせるための、国際的なキャンペーンを開始し、トニー・ブレア(元イギリス首相)をはじめとして、ILO関係者や各国大使らをコミュニティに招いて視察をさせたそうです。日本の駐イスラエル大使も、2度も訪問しているそうだから、渓谷に暮らすパレスチナ人の立場に立った行動をとるよう、ぜひとも働き掛けて欲しいと思う。
 こうした取り組みをもってしても、入植地の拡大のために土地の必要なイスラエル当局は家屋破壊や、水タンクの没収をやめないのだそうです。これらの破壊の結果、パレスチナ人のコミュニティとイスラエル人の入植地の暮らしぶりは、同じ土地の上のちょっとした距離の差を疑わせるほどの違いを見せています。

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 ファトヒさんたちのユニークな取り組みのひとつとして、学校建設の話がありました。「軍事閉鎖地域」では、一般家屋の建設・補修もさることながら、公共施設である学校の建設が認められない結果、渓谷に暮らす子どもたちはたいへんな遠距離通学を強いられているといいます。そしてそうやって通う学校も、決して平穏な場ではありません。時として武装した兵士が子どもたちを銃口で威嚇します。しかし子どもたちは負けずに学校に通うということです。
 そうした教育環境を改善しようと、無校村での学校建設プロジェクトがイギリスのグループの支援で続けられているそうです。ただの建設ではありません。破壊されてもダメージのないように、土地で採れる粘土からできる日干しレンガを積み上げてつくる学校。そんな学校が08年初頭には開校するそうです。

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 学校の建設は、パレスチナ人のコミュニティ破壊という、イスラエルの占領政策への挑戦の一歩です。しかし占領政策は破壊の位相以外にも、さまざまなかたちでコミュニティを蝕んでいます。そのひとつが食品資本カーメル・アグレスコ社の進出などに見られる、イスラエル企業によるパレスチナの地場の第一次産業の圧迫と労働搾取です。またそれら企業に農作物を供給する入植地では、児童労働さえもが横行し、無保険・低賃金で働かされる子どもも多いといいます。パレスチナの農産物は検問封鎖で出荷の時期を逃して打ち捨てられ、一方でイスラエルの産品は世界中に12時間以内にデリバリーされています。そうした環境のもとで、生活を締め上げられて声も上げられない、声をあげないことで占領は続くという悪循環が続くのだと、ファトヒさんは淡々と語り続けました。

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 ファトヒさんは最後に、有名な「分離壁」の問題について、ちょっとだけ触れました。高さ9mの壁は、すでに420kmが完成。パレスチナの主要都市はすでにその包囲のもとにあり、ナブルス、ラーマッラー、エリコなど、パレスチナ人の名だたる都市には検問を通らずには入れない状況だということです。しかし今日の話を通して聞いて見て、その壁の問題は重要でこそあれ、占領の問題の本当に外縁に過ぎないということが、よくわかりました。
 こうした状況におかれているパレスチナ人が300万人、その中にさえ入れずに離散している人びとが500万人。しかし多くの人びとは今も占領の前から同じところに住み続けているし、これからも住んでいくだろう──雄壮な、というのとはまた別の、もうちょっと腹にこもったような力強さをこめて、ファトヒさんは講演をこう締めくくりました。

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 集会はここで中休みをはさみ、その後質疑へと移りましたが、その紹介はこのブログで扱うには長すぎるので、また別の機会にさせていただきます。
 この中休みには、フリー・ジャーナリストの小田切拓さんがほんの数日前に撮影し、ファトヒさんに託して日本に持ち帰ってもらった、貴重なビデオの上映もありました。占領当局によって開発の進むハイウェイの周囲。かたやパレスチナ人の村落へと続く道は整備も悪く、またそうして辿り着いた集落は、遠方の入植地とくらべて際立って家々が密集している──上映時間はわずかとなってしまいましたが、ファトヒさんのお話で思い描いたものを像として結ばせるような、そんな一コマでした。これもまた、別の機会に紹介できればと思います。

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 この紹介でお伝えした、ヨルダン渓谷の模様については、ファトヒさんの所属する「パレスチナ反アパルトヘイトウォール草の根キャンペーン」のサイトでも、写真で紹介しています。

Demolitions in the Jordan valley
The Occupation's Expulsion Policy in al-Hadidiye
 
posted by in東京 at 02:10| 集会の報告 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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